雑損控除になる損失は何?計算方法までしっかり解説するよ

所得控除(税金を安くしてもらえる制度)の中に雑損控除、という項目があります。

雑損控除とは普段の生活の中ではなかなか起きないけど、大きな被害が発生した時に税金を免除しますよ~、という制度です。

雑損控除の存在は知っているけど、対象になる損失がどういう物かよくわからない、という人も多いようなので、ここでは雑損控除の対象になる物を一つずつ掘り下げて見ていきたいと思います。

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雑損控除の対象になる損失

雑損控除の対象になるものは、大きく分けて5つの分類があり、

・自然災害(地震、台風、洪水、など)
・人的災害(放火にあった等)
・害虫災害(害虫や害獣などの被害)
・盗難(空き巣や強盗など)
・横領

が雑損控除に当たります。それでは、対象になるものを掘り下げて見ていきましょう。

 

自然災害(地震、台風、洪水、など)

地震保険料控除計算自然災害は「震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害」が対象になります。

この災害の特殊なケースとして、自然災害に起因する風評被害、という物が雑損控除の対象になることもあるようです。

例えば、2011年の東日本大震災ですね。原発事故による放射能の風評被害を受け、農業事業者が損害を被ったとして、雑損控除の対象となったケースもあるようです。

 

人的災害(放火にあった等)

税法上の規定は「火災、火薬類の爆発など人の手による異常な災害」となります。

火災だけでなく、予期できない被害も対象となります。

極端な例ですが、

近くを飛んでいたヘリコプターが墜落して、家が大きく壊れてしまった、

なんて場合も、この人的災害に含まれます。

人の手により自分の資産が被害を被った、というのがポイントになります。

 

害虫災害(害虫や害獣などの被害)

雑損控除申請計算害虫災害、例えばシロアリによって家の基礎部分が損害を受けた場合などですね。害虫の駆除や家の修繕費用などは雑損控除の対象になります。

害虫災害を予防するための出費も雑損控除の対象になりそうな気がしますが、これは対象にはなりません。(雑損控除は損失が発生した原因に対する出費の控除である為)

これは害虫災害でなく他の災害でも同じなので、注意しましょう。

 

盗難(空き巣や強盗など)

盗難には色々ありますので、一概に全部OKとは言えません。

雑損控除の対象になる前提として「生活に不可欠と考えられる資産」という条件があります。

例えば車が盗まれた場合ですが、

・田舎に住んでいて、通勤に車を使わなければ生活が成り立たない
・通勤は徒歩圏内で、車は週末に遠出する時に使う程度

一つ目の場合は雑損控除の対象になりますが、二つ目の例の場合は、生活に不可欠とは言えませんので雑損控除の対象にするのは難しいでしょう。

 

詐欺や恐喝は対象外

盗難と似たように感じられる詐欺や恐喝による被害は、雑損控除の対象外となります。対象外となるポイントは「自己意思の有無」となります。

詐欺は相手から話を持ちかけられ、その話の信頼性や妥当性を判断し損ねた為に起こる損失です。詐欺でお金を払う時には、自分の意思で支払っている訳なので、雑損控除の対象にはなりません。

恐喝は不可抗力なように感じますが、その場から逃げ出す・警察に対応してもらう、などの対抗手段が取れます。(状況によっては難しい場合もあるかもしれませんが)

その為、恐喝は雑損控除の対象にならないという訳ですね。

 

横領

横領については特殊なケースが多いので、一般論としてお話するのは難しいです。

というのは横領というのは税法上に明確な定義がありません。証明するのも難しいですからね…

もし横領の被害にあってしまったら、税務署または税理士に相談をするのが一番良いと思います。

 

雑損控除を申請できる条件は?

雑損控除が適用される条件は、2つの条件があります。

・雑損控除の対象者

「納税者」である
「納税者と生計が一緒になっている配偶者、または親族で所得が38万円以下の人」

ほとんどの人は当てはまっていると思いますので、ここは特に気にしなくて良いと思います。

 

雑損控除っていくらくらい返ってくるの?計算方法は?

雑損控除申請計算それでは雑損控除をしたらどのくらい節税効果があるのか、具体例を上げて見てみましょう。

雑損控除の計算方法は、まず差引損失額というのを求めます。

 

・差引損失額の計算式

差引損失額=損害金額+災害などによる支出-保険金等の補償金額

この計算式により、雑損控除の計算基準額が決まります。

次にこの計算式を用いて、雑損控除額を計算します。雑損控除は計算式が2つあり、計算結果の高いほうが適用されます。

 

・雑損控除の計算式

1:差引損失額ー総所得金額等×10%
2:差引損失額のうち災害関連支出の金額ー5万円

この2つの計算式のどちらか金額が高い方を使います。

 

雑損控除の簡単な具体例で計算してみよう

文章だとわかりにくいので、簡単な具体例を上げてみたいと思います。

 

例)年間所得500万円の会社員Aさんが火災にあって損失額100万円、火災が原因で発生した支出額40万円、火災保険で保障を50万円受けた場合

なんか数学の文章問題みたいですね(笑) それでは計算式に当てはめてみましょう。

 

差引損失額:100万円+40万円ー50万円=90万円

この90万円を雑損控除の計算式にあてはめます。

1:90万円ー(500万円✕10%)=40万円
2:40万円ー5万円=35万円

1の方が計算後の金額が高いので、雑損控除の計算額は40万円となります。

 

雑損控除は所得控除なので、年間の所得額が40万円低かった想定で税額が計算されます。

年収500万円の場合は税率20%なので、40万円✕20%で8万円納税しなくて良い、という事になりますね。

 

雑損控除は3年間、持ち越しできる

災害などで家を失ってしまった場合など、損害がかなりの金額になる事もあります。

その場合、年間の所得額よりも雑損控除の金額の方が高くなる場合があります。

例えば年間所得400万で、家を火災で失って雑損控除の計算金額が500万だった。こんなケースですね。

こういった場合は、雑損控除の余剰額は翌年以降に持ち越せるんですね。3年に分けて控除できるという点を覚えておきましょう。

 

自分で判断せず、税務署や税理士に相談するのがベスト

雑損控除申請計算ここまで雑損控除の対象になる出費をお伝えしましたが、雑損控除については判断が難しく、意識していなかった物でも雑損控除の対象となったりもします。

雑損控除の対象と思えるような出費があった場合は、まずは税務署に相談をしてみる事をオススメしますよ。

雑損控除の還付申告は確定申告をしなければいけない事もあって、始めての人はハードルが高いと思います。なので、もし被害にあってしまったら、落ち着いてから税務署に相談をしてみましょう。

とはいえ雑損控除の対象になる被害は、そうそう起きるものではないので、「大きな出費があった時は雑損控除で節税できるかもしれない」という事だけ頭の片隅で覚えておきましょう。

 

まとめ

  • 雑損控除は特例で大きな被害が発生した時に税金が安くなる制度
  • 自然災害、人的災害、害虫災害、盗難、横領など
  • 雑損控除は3年間持ち越しできる
  • 大きな出費があったら税務署に相談してみよう!

以上です。参考になれば嬉しいです!

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参考リンク

・国税庁webサイト